美味しいのはもちろん一皿ごとが「映え」る、料理研究家の馬場香織先生の「人気のお料理」。
専門の漁業経済に食いしん坊の見地を加え、各地の食文化や魚食を語る馬場治先生の「浜の食べ方」。
「魚料理は面倒だから…」は、これで解決! すぐに作りたくなる「-お手軽レシピ-シリーズ」。
本ページでは撮影現場にて生じる、誌面に乗り切らずに削っている情報と写真を紹介していきます。

撮影は6月。フライにするのが勿体なくてためらうほどの脂の乗りで、包丁にまな板、そして手もヌルヌルと滑る滑る。
それもそのはず、「旬」真っ只中であるこの時期のイワシは「入梅いわし」とも言われ、1年の中で最も脂が乗っています。
当日に作る料理や数が決まっていても、用意した魚や付け合わせの野菜から浮かんだレシピで、毎回品数が追加されます。
そんな撮影中は、香織先生の「ライブキッチン」の一番前にいる感覚で、「次は何を始めるの?」と、ワクワクしながらずっと目で追いかけています。
今回即興で出来上がったのは写真の4品。
いつものことながら、イワシづくしでも全く食べ飽きません。
先生の腕と、計り知れない魚のポテンシャルに、改めて脱帽。
魚の内臓を取り除く際の感触が、苦手な方も少なくないのでは?
さらに、爪の中に入り込んだ汚れを洗い流すのはもっと嫌。
そこで、ちょっとした小技(Tips)をご紹介!
魚の腹を切り落としたら、親指の爪を上向きのまま、内臓をの下に差し入れます。
そのまま内臓を押し上げるとスルッと剥がれ、爪の中に入り込む汚れが軽減されますよ。


干物の原稿を書くことになり、とある会で知り合った豊洲市場の干物専門仲卸「株式会社 村和(むらわ)」に取材を申し込んだところ、快く承諾いただいた。
当日は、イワシの色々な干物を見せてもらい、様々な話を聞くことができたが、この訪問を通じてイワシの干物に関していくつかの面白いことに気づくことになる。
まず一つ目は、イワシの丸干しは通称「目刺し」と呼ぶことが多いが、丸干しをよく観察すると、目に竹串などを通して干してある本来の目刺しの他に、鰓蓋(えらぶた)の裏側に串などを通して口に出す「顎刺し(あござし)」という、二つの方法があるのだ。
しかも、顎刺しの他に、「頬刺し(ほほざし)」と表示されている商品もあり、顎刺しと表示されている商品と頬刺しと表示されている商品を何点か見比べてみるが、両者に違いはないように思える。
魚の頭の側面には鰓蓋と呼ばれる部位があり、これが魚の頬に相当する部分にあるため、鰓蓋の裏側から串などを通す方法を頬刺しと呼ぶのだろうと推測。
他方、顎刺しでは、鰓蓋の裏側から通した串が出るところが口であり、口は上顎と下顎から構成されていることから、出る場所のことを指して顎刺しと呼ぶのではないかと、こちらも推測した。
結果、顎刺しと頬刺しの違いについて文献等で詳細に調べたわけではないが、見た限りでは両者には違いはないとの考察に至った。
二つ目は、目刺し、あるいは顎刺し(または頬刺し)を小売用のトレーに入れてラップした商品を比較すると、両者には違いがあるように感じたことだ。
目刺しの場合は、串を抜かずにトレーに入れている商品が多く、他方、顎刺しの場合は串を抜いてトレーに入れている商品も多いようにも思える。
その理由は、目刺しの場合、串を抜いてトレーに入れると、目がないことがやや違和感を与えるのに対して、顎刺しの場合は、串を抜いてトレーに入れても目が残っているために違和感を与えないからではないか。(私の勝手な思い込み?)
三つ目は、丸干し製品の産地について。イワシ丸干しの産地というと、関東では銚子から九十九里などの外房地域を思い浮かべるが、村和で見たときには、銚子産、九十九里産などの他に、大都市に面した大阪湾、伊勢湾といった内湾でまき網によって漁獲された原料を使用した大阪産、愛知産の丸干しも多く見られた。
大阪湾や伊勢湾の内湾で漁獲された脂の乗りが良く、丸々と太ったマイワシは、体長はそれほど大きくはなく、鮮魚としても丸干しとしても豊洲市場では最高の評価を与えられている。
今度イワシの丸干しを買うときは、こんな点も見ながら買うと面白いかなと、市場に来る理由がまた一つ増えて、嬉しい。