本協定は、資源管理基本方針(令和2年農林水産省告示第1982号。)別紙に定められた大中型まき網漁業に係る特定水産資源等の管理に関して漁獲割当管理区分以外の管理区分の漁獲可能量を超えないよう効果的な資源管理の推進を目的として、本協定参加者により、当該特定水産資源に関して自主的な資源管理の目標を定め、当該資源管理の目標の達成のために具体的な取組を行うことで、もって当該特定水産資源の保存及び管理を図るものである。
大中型まき網漁業の操業水域
マアジ、マイワシ、サバ類(マサバ及びゴマサバ)、スルメイカ、カツオ、クロマグロ(小型魚、大型魚)
資源管理の目標は、対象となる水産資源ごとに資源管理基本方針別紙に定める目標とする。
海にすむ魚は、概ね浮魚(うきうお)と底魚(そこうお)とに分けることができる。浮魚は海面近くの表層から中層に、底魚は底層に生息することからそう呼ばれる。
多獲性の沿岸回遊魚である浮魚の特徴は、長期的な変動を繰り返すこと、卓越種が入れ替る(魚種交替)こと、資源の増減にともない分布域が拡大縮小すること、群れを形成すること、北に索餌場・南に産卵場があること、索餌・北上回遊、南下・産卵回遊することである。
我が国周辺には太平洋側の黒潮・親潮域の沿岸よりに分布する浮魚と東シナ海から日本海(主に西部)にかけての対馬暖流域に分布する浮魚とに大別される(系群と呼ばれる)。
近年にみられた卓越種の交替は、ニシン→マイワシ→マアジ+サンマ→マサバ→マイワシ→マアジ+サンマの順である。サンマとマアジの変動はほぼ同期している。現在は高水準の卓越種はないが、マイワシ資源に回復の兆しがみえている。
卓越種の変動幅は魚種により異なるが、マイワシは特に大きく、分布の縁辺域において顕著である。例えば、縁辺域のまき網漁場である北海道釧路沖の道東海域(索餌・北上回遊に相当)では低水準期には漁獲量がゼロの年が続く。しかし1960年代後半から1970年代前半のマサバや1980年代のマイワシのように高水準期には、まき網漁場が形成される。
浮魚の資源動向については、減少傾向にある太平洋系群のマサバ、ゴマサバ、マアジを除くと、他は横ばいないし増加傾向で浮魚資源は概ね回復基調にあるといえよう。
大中型まき網(遠洋かつおまぐろを除く)による日本周辺の漁獲量は、わが国海面漁業の28.4~30.6%(2017~2023年)を占める主要漁業(過去最高は2020年の30.6%)である。大中型まき網漁業の生産割合は10年前の20%前後から2017年以降は30%前後を維持し、重要度が高い。1997年度から開始されたTAC(漁獲可能量)制度の下で、2020年度からMSY(最大持続生産量)を目指す系群別の資源管理が開始され、そして翌年度には大臣許可漁業にIQ管理が導入された。新しい資源管理のもとで資源のさらなるフル活用・有効利用を期待したい。
持続的生産を目指すTAC管理下では量産型漁業といわれるまき網漁業が乱獲に陥ることはないであろう。浮魚資源の来遊状況に応じて漁場を移動しつつ効率的な操業をするまき網漁業は水産物の安定供給、自給力の維持・強化に寄与している。
水産大学校 名誉教授 原一郎
2025年5月