まき網漁業について

まき網漁業とは

まき網 [ 巻網/旋網 ]

魚群探知機、ソナー、目視などで魚群を発見すると魚種にあった漁網(イワシ、サバ、イナダ、カツオ・マグロ網など)で巻き、運搬船に積上げて漁獲する。操業方法により、1そうまき、2そうまきがあり、集魚灯の使用が認められている場合もある。大中型まき網漁業のトン数階層は網船が15トン以上760トンまでで、船団構成は操業の方法、船の積載量(網や漁獲物)等により網船、探査船、運搬船、レッコボードの数隻からなっている。

網の大きさが対象魚種、漁場状況等で異なるが、2そうまきでは長さが1,000m程度、1そうまきでは1,600−1,800m程度で、深さはいずれも100−250m程度である。2そうまき漁法はすばやく巻ける利点がある。

まき網の操業過程図
大中型まき網漁業の概要

大中型まき網漁業は、わが国周辺沖合の水域において、網船、探索船、運搬船などの4〜6隻で、または省エネ・操業コスト削減等の観点から網船と運搬船など2〜3隻で船団を組み、周年、アジ、サバ、イワシ、カツオ、マグロなど浮魚を漁獲する漁業と、遠洋水域において、網船1隻で主にかつおを漁獲する漁業があります。

年々、船団数は減少傾向にありますが、現在約98ヶ統の大中型まき網漁業船団が年間約86万トン、約1,030億円(わが国海面漁業の漁獲量の2〜3割、水揚金額の約1割)の水揚を行い、わが国漁業生産にとって最も重要な漁業のひとつとなっています。

浮魚の多くはわが国周辺水域で生まれ、大きな魚群を作り主に沖合水域を季節的に大回遊しています。

浮魚は、より大型の魚や鯨類に捕食され、また海洋の自然変動により、その資源量は数十年の周期で大きく増減しています。現在、さば資源は増加傾向で、まいわし資源は低水準から回復の兆しが見えます。

このような特性を持つ浮魚の漁獲に最も適する漁法として大中型まき網漁業があります。

まき網の主漁獲対象である浮魚資源の特徴

海にすむ魚は、概ね浮魚(うきうお)と底魚(そこうお)とに分けることができる。浮魚は海面近くの表層から中層に、底魚は底層に生息することからそう呼ばれる。

多獲性の沿岸回遊魚である浮魚の特徴は、長期的な変動を繰り返すこと、卓越種が入れ替る(魚種交替)こと、資源の増減にともない分布域が拡大縮小すること、大きな群れを形成すること、北に索餌場・南に産卵場があること、春から夏に索餌・北上回遊、秋から冬に南下・産卵回遊することである。

我が国周辺を大まかにみると、太平洋側の黒潮・親潮域の沿岸よりに分布する浮魚と東シナ海から日本海(主に西部)にかけての対馬暖流域に分布する浮魚とに大別される(系群と呼ばれる)。

近年にみられた卓越種の変化は、ニシン→マイワシ→マアジ+サンマ→マサバ→マイワシ→マアジ+サンマの順である。これらが魚種交替の主役である。サンマとマアジの変動はほぼ同期している。現在は高水準の卓越種はないが、マイワシ資源に回復の兆しがみえている。

卓越種の変動幅(振幅)は魚種により異なるが、マイワシの変動は特に大きく、分布の縁辺域において顕著である。例えば、縁辺域のまき網漁場である北海道釧路沖の道東海域(索餌・北上回遊に相当)では低水準期には漁獲量がゼロの年が続く。しかし1960年代後半から1970年代前半のマサバ(1974年28万トン)や1980年代のマイワシ(1987年120万トン)のように高水準期にはまき網漁場が形成される。

浮魚の資源動向については、減少傾向にあるゴマサバを除くと、他は横ばいないし増加傾向で浮魚資源は概ね回復基調にあるといえよう。

遠洋かつおまぐろを対象とする大中型まき網を除いた大中型まき網による日本周辺の漁獲量は我が国海面漁業の20.1〜30.6%(2010〜2021年)を占める主要漁業(過去最高は2020、2021年の30.6%)である。海面漁業における大中型まき網漁業の生産割合は10年前の20%前後から最近は2年連続で30%に達し、重要度が高まっている。1997年度から開始されたTAC(漁獲可能量)制度の下で、2020年度からMSY(最大持続生産量)を目指す系群別の資源管理が開始された。新しい資源管理のもとで資源のさらなるフル活用・有効利用を期待したい。

持続的生産を目指すTAC管理下では量産型漁業といわれるまき網漁業が乱獲に陥ることはないであろう。浮魚資源の季節的な来遊状況に応じて漁場を移動しつつ効率的な操業をするまき網漁業は国民への水産物の安定供給、自給力の維持・強化に寄与している。

水産大学校 名誉教授 原一郎
2023年4月

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